縁側を通して地域とつながる拠点に

2018年8月、沖縄県うるま市に8カ所目となる「第三の居場所」がオープンしました。うるま拠点は、対象の子どもたちの通う小学校に隣接している一軒家が舞台。長年空家になっていたことから、外周や木々、雑草が荒れ放題に伸び放題。7月から活動したスタッフは、毎日炎天下の中をスコップや鎌、ノコギリを手に整備してきました。
関係者の皆さまのおかげで完成した拠点は、こぢんまりとした住宅、といった雰囲気ですが、通りから見える場所には広い遊び場と、縁側があります。子どもたちがこの縁側で遊んだり、スタッフが手作りした黒板に絵を描いたりしていると、通りかかる地域の方々が声をかけてくださいます。時には一緒に座っておしゃべりをしたり、おやつの差し入れをいただいたりすることもあります。最近では飼っているヤギを連れてきて、子どもたちを喜ばせてくださいました。
たくさんの人に見守られる事で、子どもたちが地域の一員であることを自覚し、成長できる居場所になれればと思っています。
夏休みにオープン!
開所式を終えるとすぐに受け入れる子どもたちが決まり、月曜日~土曜日の朝8時から午後9時まで、子ども達と過ごす生活が始まりました。事前に関係機関に出向き子どもたちと顔を合わせていたものの、受け入れ前はやはり多少不安がありました。ですが、オープンが長期休み中だったこともあってか、長時間過ごすことでの利点もありましたので、子どもたちの家庭環境にも触れながら挙げてみたいと思います。
ケース1:A兄弟 子どもたちの生活の様子を知ることが出来た
A兄弟は養育に少し困難がある母親の元に育ち、初めは朝食も食べずに来所。入浴の習慣も毎日ではなく、同じ服を着続けている等の様子が見られたので、拠点では朝食を済ませてから活動を開始。毎日のシャワーを繰り返すうちに、体を清潔に保つことが心地よいと感じてくれている様子が見られるようになりました。
ケース2:B兄弟 スタッフとの距離が縮まり、自分の気持ちを出せるようになった
幼少より父子家庭で育つB兄弟。女性との関わりは学校の先生や児童館のスタッフが主で、どう接していいのかわからず、甘え方を知らないとのことでした。拠点には、20代から50代の幅広い年代の女性スタッフがいます。温かく、手厚く関わることで、遠慮がちで少し硬かった表情がほぐれ、甘える姿も見せるようになってきました。
ケース3:Cちゃん 新学期へ向けて、生活リズムを崩すことなく過ごせた
父親に精神的不安があり、祖父母に育てられているCちゃん。主な活動範囲は家庭のみで、一人遊びが多いせいか、独り言を繰り返すCちゃんのことを祖母はとても心配していましたが、拠点に行くようになってからは友達と思いきり遊び、学習し、苦手な野菜も食べられるようになったこと、また帰宅してからは早めに就寝出来ていることを、祖母は嬉しそうな表情で話してくれました。

長期休みならではのともに過ごす時間の長さを利用して、自分たちでお弁当やおやつを作ったり、夏休みの課題に一緒に取り組んだり、充実した日々を過ごすことが出来ました。また、保護者が忙しく、諸事情によって思うようにかなわない外出活動をいくつか企画し体験する場が持てたことは、子どもたちにとって楽しい思い出になったようでした。
さあ、2学期が始まりました!
暑い夏休みの1カ月間、パワーの源ゴーヤー料理をたくさん食べて、みっちり拠点で過ごした子どもたちは、みんな元気に2学期をスタートすることが出来ました。「ただいま」と大きな声で帰ってくる、おやつを楽しみに頑張って宿題を終わらせる、食事のマナー、食後の片付け、歯磨き。一人ひとりが夏休みに身に付けた習慣を見せる姿を嬉しく感じています。
うるま拠点はスタートしたばかりですが、これからも子どもたちにとって安心・安全な居場所となるよう、スタッフ一同笑顔を絶やさず、子どもたちの声に耳を傾けながら心を通わせていきたいと思います。
第三の居場所 うるま拠点マネージャー 石川真奈美


日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。