社会課題に取り組むスタートアップ/起業家の支援(2/2)
社会課題に取り組む起業家への支援プログラム
当財団は、ソーシャルイノベーションフォーラムを通して社会課題解決の担い手の発掘や支援を行ってきたが、国内では依然として社会課題に取り組む起業家やスタートアップへの支援は少なく、とりわけ創業初期のスタートアップを支援する体制は不足している。そこで当財団は、アジアを拠点にスタートアップの支援に実績がある一般社団法人ImpacTech Japanと共同で、「日本財団ソーシャルチェンジメーカーズ」(以下、SCM)を2019年に創設した。SCMは、社会課題に取り組むスタートアップを対象とした4カ月間のプログラムであり、マーケティング、資金調達、デザイン、広報、法財務など各領域の専門家が講師およびメンターとしてスタートアップを多角的に支援するもの。ImpacTech Japanのグローバルなネットワークに所属する海外のメンターや専門家、卒業生らのコミュニティによるサポートも提供している。
これまでSCM第1期から第5期までを実施し、計55社のスタートアップが参加した。プログラムの応募は、SCM第1期では約30社であったが、第4期では約70社まで増加し、起業家からの関心の高さがうかがえた。SCM第1期では、参加スタートアップのうち3社が一般社団法人社会変革推進財団(SIIF)からの資金調達に成功し、現在もSIIFによる伴走支援を受けながら事業を拡大させている。


継続的な情報発信と支援ネットワークの構築
SCMに参加したスタートアップをより広く一般に知ってもらうため、「日本財団スタートアップ支援プロジェクトサイト(外部リンク)」を立ち上げ、各社の事業内容を発信している。また、同サイトでは、起業を目指す人や創業初期の起業家に向けて、資金調達やインパクト投資(※2)などをテーマに実用的なレポートを発信している。今後もウェブサイトを通じて、スタートアップの課題解決や認知度向上の一助となる情報発信を継続していく。
これまでの取り組みを基盤に、スタートアップが持続的に事業を成長させ社会課題の解決を加速できるよう、スタートアップ支援のネットワークの拡大を図りたい。
(嶋田 康平/経営企画広報部)
- ※2. インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資のこと。
受賞者リスト
※肩書・名称は当時のもの。五十音順で記載。
日本財団ソーシャルイノベーションアワード2019
名前 | 所属 | プロジェクト名 |
---|---|---|
小栗 伸 | 株式会社NTTドコモ | 外国人材が活躍できる日本へ!AIを活用した日本語会話トレーニングおよび就業支援プロジェクト |
尾中 友哉
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NPO法人Silent Voice | ローカル地域の難聴児にオンライン家庭教師を届ける |
梶栗 隆弘 | エリー株式会社 | 機能性昆虫食「シルクフード」 |
北嶋 史誉 | 一般社団法人ソーシャルアクション機構 | デイサービスの送迎車を相乗りし、交通弱者を支援する「福祉Mover」 |
佐藤 美和子 | ENERGY BLOCK | ENERGY BLOCK |
下村 明司 | 株式会社Magic Shields (2020年1月法人化) |
転んだ時だけ柔らかいジョイントマット「ころやわ」 |
隅屋 輝佳 (再チャレンジ枠) |
一般社団法人Pnika | クラウドロー(Crowdlaw)・プラットフォームPnika |
タキザワ ケイタ | 一般社団法人PLAYERS | 「&HAND」やさしさからやさしさが生まれる社会へ |
千野 歩 | SensinGood Lab. | 「あしらせ」みちびきを活用した視覚障害者向け歩行支援センスウェア |
西ヶ谷 有輝 | 株式会社アグロデザイン・スタジオ | 人や環境に安全なスマート農薬の開発 |
日本財団ソーシャルイノベーションアワード2018
名前 | 所属 | プロジェクト名 |
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川本 亮
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Grubin | アメリカミズアブを活用、フードロス0を実現する |
小山 智也 | チームクスリナクス 田辺三菱製薬株式会社 |
疾患発症抑制を目的とした健康無関心層に対するナッジ提供事業 |
笹野 晋平 | 株式会社村田製作所 | 保育士の心理的負担の軽減と保育士不足による待機児童問題の解決 |
篠原 智昭 | 一般社団法人こいのぼり | 患者家族発・難病創薬プロジェクト「7 SEAS PROJECT」 |
島影 圭佑
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株式会社オトングラス | OTON GLASS―視覚障害者の読む能力を拡張する眼鏡― |
島田 昌幸 | 株式会社ワンテーブル | LIFESTOCK |
鈴木 正臣
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株式会社エスジー | 不動産の資産価値を下げない安価な耐震補強技術の開発と普及 |
竹内 明日香 | 一般社団法人アルバ・エデュ | 日本の子どもに話すちからを。 |
中嶋 直人 | りそな銀行 | 将来価値で返済額が減る学生ローンの開発と大衆化 |
連 勇太朗 | 特定非営利活動法人モクチン企画 | つながりを育むまち―「レシピ」による空き家・空室の再生事業 |
2017年度ソーシャルイノベーター
名前 | 所属・肩書き | プロジェクト名 |
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浅谷 治希
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LOUPE Inc. CEO, founder | 日本教員多忙化対策委員会 |
安部 敏樹 | 一般社団法人リディラバ代表理事 | ソーシャルセクター全体のR&D部門に |
岡 勇樹
|
NPO法人Ubdobe代表理事 | Digital Interactive Rehabilitation System(デジリハ) |
川口 良
|
一般社団法人WorkAnywhere代表理事 | CONTINUUM―コンティニウム |
小松 洋介 | 特定非営利活動法人アスヘノキボウ代表理事 | Venture For Japan |
仁藤 夢乃 | 一般社団法⼈Colabo代表 | 夜間巡回バスによる青少年へのアウトリーチ |
横山 太郎 | Indicocrea(インディコクリエ) | これでいいのだ! CO-MINKAN |
- ※ 2017年度最優秀賞該当者はなし。
2016年度ソーシャルイノベーター
名前 | 所属 | プロジェクト名 |
---|---|---|
伊藤 次郎 | NPO法人OVA | 「こころのインフラ」を創造する |
岩本 悠
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学校魅力化プラットフォーム | 学校を核とした地域創生のスケールアウト |
河内 崇典、 高 亜希
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collective for children | 子どもたちが生まれてから社会に出るまで当たり前に地域で暮らせる社会 |
塩山 諒 | NPO法人 スマイルスタイル | 誰もが希望を見出し、働き続けられる社会 |
下沢 貴之 | ライフジム運営協議会 | ライフジムで日本を健康に、もっと元気に |
竹井 智宏 | 一般社団法人 MAKOTO | 人が復活!地方が復活!そして、日本が復活へ! |
槌屋 詩野 | 一般社団法人 Open Impact Systems | 人々が関係性を理解し、効率的に協働する社会 |
手島 大輔 | セルザチャレンジ | 革新的な口腔ケアで全国の障害者の仕事創出 |
中嶋 健造 | NPO法人 自伐型林業推進協会 | 世界をリードする森林大国日本へ |
林 篤志
|
Next Commons Lab | ポスト資本主義・新しい社会システムの構築 |
本事業を行う中で得た気づき
社会課題が複雑になる中で、当財団の役割は何か。その問いへの一つの応答が、スタートアップや起業家の方々との協働だった。新たな視点、新たな手法で課題解決に挑戦する際には、多くの困難が伴う。そんな時に、当財団の持つ、行政や企業、非営利団体とのネットワークを通して支援することが、私たちが果たすべき「ハブ」としての役割ではないかと感じている。
