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都市に人口が集中すると、なぜ安心・安全に暮(く)らせない人が増(ふ)える?

小学生のためのSDGs入門記事。第12回は、目標(もくひょう)11「住み続(つづ)けられるまちづくりを」について考えてみましょう。
世界では今、ものすごい速さで「都市化」が進んでいます。
都市化とは、仕事や勉強などの場を求(もと)めて、人がより大きいまちに移動(いどう)し、大きいまちがさら大きくなってたくさんの人が集まる「都市」になっていくことです。
多(おお)くの人が都市に住むことで、たくさんのお店や会社が集まり、学校といった勉強の場、劇場(げきじょう)や映画館(えいがかん)などの文化施設(ぶんかしせつ)もできていき、都市は周辺地域(しゅうへんちいき)の経済(けいざい)や文化の中心になっていきます。
しかし、たくさんの人が都市部に集まってしまうことで問題も起こります。
例(たと)えば移動手段(いどうしゅだん)の問題。人の多い都市部でみんなが車に乗ると排気(はいき)ガスによる空気の汚染(おせん)や、交通じゅうたいなどの問題が起こります。
また便利(べんり)な電車やバスといった公共交通機関(こうきょうこうつうきかん)が充実(じゅうじつ)していますが、駅のホームまでいくのに階段しかなかったり、乗り降(お)りする場所に段差(だんさ)があったりするなど、小さな子どもやお年寄(としよ)り、障害(しょうがい)のある人が使いづらくなっていることもめずらしくありません。
一方で、人が都市に出て行って人口が少なくなった村や町では、公共交通機関(こうきょうこうつうきかん)を使う人が減(へ)ってバスや電車の本数が少なくなってしまう、廃線(はいせん)になってしまうといった問題が起こります。
世界全体の2人に1人が公共交通機関(こうきょうこうつうきかん)を簡単(かんたん)に使えずに困(こま)っている、というデータもあります。
このように、都市化が進む中で起こる問題に目を向けながら、たくさんの人が快適(かいてき)に暮(く)らし続(つづ)けられるまちをどのようにつくっていくのかを考えるのが、目標(もくひょう)11「住み続(つづ)けられるまちづくりを」です。
連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)
世界にあるまちづくりの問題
現在、80億(おく)人をこえる世界人口のうち、半分以上(いじょう)になる56パーセントの人々(ひとびと)が都市部で暮(く)らしています。都市に住む人の数は年々増(ふ)えており、2050年までに世界の68パーセントが都市に住むようになると予想されています。
しかし、急激(きゅうげき)な都市化はいろいろな問題を引き起こしています。

●スラムの誕生(たんじょう)
「スラム」とは、都市の中でもとても貧(まず)しい人たちが住んでいる地域(ちいき)のことです。
仕事を求(もと)めて地方からやってくる人の中には、都市部の家賃(やちん)が高くて家を借(か)りられないことがあります。そのため、使われていない土地を見つけて、板やトタンで簡単(かんたん)な家を建(た)てて、そこで生活する人もいます。
そういう人たちが集まってできたまちのことをスラムといいます。
現在、都市に住む人たちのうち11億(おく)人がスラムに暮(く)らしており、今後30年でさらに20億(おく)人増(ふ)える見こみです。
きれいな水や電気などの設備(せつび)が十分にないスラムの暮らしは、衛生状態(えいせいじょうたい)が悪く病気になりやすい、治安(ちあん)が悪くなって犯罪(はんざい)が起こりやすい、といった問題が起こります。
貧(まず)しい人でも住む家を安く借(か)りられて、安全に暮(く)らせる住まいをつくることが求(もと)められています。

●車の排気(はいき)ガスによる大気汚染(たいきおせん)
たくさんの人が集まる都市部では、自家用車からタクシー、トラックとさまざまな車が使われます。そのため、排気(はいき)による都市の大気汚染(たいきおせん)が深刻(しんこく)な問題になっています。
世界人口のおよそ10人中9人が、世界保健機関(せかいほけんきかん※)の基準(きじゅん)を満(み)たさない汚染(おせん)された大気の中で暮(く)らしています。
- ※ 保健(ほけん)問題に関(かん)する国際協力(こくさいきょうりょく)を目的(もくてき)とする機関(きかん)
汚染(おせん)された大気は心臓(しんぞう)や肺(はい)の病気など、健康被害(けんこうひがい)の原因(げんいん)になります。
大気汚染(たいきおせん)が原因(げんいん)で死んでしまう人の数は年間700万人以上(いじょう)、特(とく)にものすごい速さで発展(はってん)し、工場や自動車の数が増(ふ)えている途上国(とじょうこく)での大気汚染(たいきおせん)は深刻(しんこく)な問題です。
こういった大気汚染(たいきおせん)は、都市だけではなく農村にもえいきょうをあたえます。大気汚染(たいきおせん)で生まれる成分(せいぶん)が日光をさえぎってしまうほか、葉の表面をおおったり、植物の細胞(さいぼう)を傷(きず)つけたりしてしまうからです。
また大気汚染(たいきおせん)が原因(げんいん)で雨水が酸性(さんせい)になって、農作物を傷(きず)つけたり、土の成分(せいぶん)を変(か)えてしまったり、ということも起こります。

日本のまちづくりの問題
●進む少子高齢化(しょうしこうれいか)と過疎化(かそか)
日本全体では子どもの数が減(へ)ってお年寄(としよ)りの数が増(ふ)える「少子高齢化(しょうしこうれいか)」が進んでいます。そのため、都市化で人が都市部に移動してしまうと、その他の場所は人口がどんどん減(へ)ってしまう過疎化(かそか)が起こっています。
目立つのは東京の周辺(しゅうへん)に人口が集中していることです。2022年に人口が増(ふ)えた市町村は東京都だけでした。
地方の人口減少(じんこうげんしょう)は、公共交通機関(こうきょうこうつうきかん)にも大きなえいきょうをあたえています。
路線バスや地域鉄道(ちいきてつどう)を使う人が減(へ)ることで、それらを運営(うんえい)している会社が苦しくなり、安定してサービスを提供(ていきょう)することが難(むずか)しくなっています。
公共交通機関(こうきょうこうつうきかん)がスムーズに動かなくなれば、地方に住む人たち、特(とく)に自分で車を運転ができないお年寄(としよ)りは病院や買い物に行くのが難(むずか)しくなってしまいます。

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●自然災害(しぜんさいがい)のリスク
地球の気候変動(きこうへんどう)によって台風や大雨などの自然災害(しぜんさいがい)も増(ふ)えています。
例(たと)えば2018年に起こった「平成30年7月豪雨(ごうう)」では、西日本を中心に広いエリアで記録的(きろくてき)な大雨になり、200人以上(いじょう)が亡(な)くなるなど、大きな被害(ひがい)が出ました。
地球温暖化(ちきゅうおんだんか)のえいきょうで、今後もこのような大雨が増(ふ)えることが予想されています。
また日本は、世界でも地震(じしん)が多い国で、年に1,000~2,000回も発生しています。南海トラフ地震(じしん)や首都直下地震(じしん)など、マグニチュード8クラスの大きな地震(じしん)が今後30年の内に起こる確率(かくりつ)は70〜80パーセントといわれています。
たくさんの人が暮(く)らす都市で自然災害(しぜんさいがい)が起こると、被害(ひがい)も大きくなります。また、都市には会社もたくさんあるので、経済(けいざい)がストップしてしまい、元の状態(じょうたい)にもどるまで時間がかかってしまいます。
自然災害(しぜんさいがい)が起こらないようにするのは難(むずか)しいため、どうすれば災害(さいがい)に強いまちにできるのか、どうすれば被害(ひがい)を減(へ)らせるのか、みんなで考える目線が求(もと)められています。

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日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み
災害対策事業(さいがいたいさくじぎょう)(別タブで開く)
ふだんは災害(さいがい)に備(そな)えた仕組みづくりを行い、災害(さいがい)が起きたときは、発生直後からまちが日常(にちじょう)を取りもどすまで長い目線で支援(しえん)を行います。国や地域社会(ちいきしゃかい)、NPOや企業(きぎょう)などと連携(れんけい)しながら取り組んでいます。
また、大きな災害(さいがい)が起こったとき、すぐに支援(しえん)ができるように「災害復興支援特別基金(さいがいふっこうしえんとくべつききん)」(別タブで開く)を設立(せつりつ)。これは被災地(ひさいち)でさまざまな支援活動(しぜんかつどう)を行う団体(だんたい)に支給(しきゅう)されるものです。
関連(かんれん)記事:
「もしも水害(すいがい)にあったら」生活再建(せいかつさいけん)をスムーズに進めるためにやるべきこと(別タブで開く)

「住み続(つづ)けられるまちづくり」の問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう? その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。
本や図書館、インターネットで調べてみよう!
- 住んでいるまちで、家を買ったり、借(か)りたりするのにどのくらいお金がかかるのか調べてみよう
- 日本にあるいろいろなまちの人口を調べてみよう。また、過去(かこ)と比(くら)べて人口がどのように変化(へんか)しているのか、人が増(ふ)えているまち、人が減(へ)っているまちを探(さが)してみよう。
- 自分の住んでいるまちで、もし電車やバスがなくなってしまったら、生活にどんな変化(へんか)があるのか、どういうところに困(こま)るのか考えてみよう。
- 自分の住んでいるまちの自然災害(しぜんさいがい)の被害(ひがい)を予測(よそく)した地図「ハザードマップ」を見て、家や学校がある場所にどういう災害(さいがい)が起こりやすいのかを調べてみよう。
「住み続(つづ)けられるまちづくりの問題」について学べるおすすめの本

『シリーズ知ってほしい!世界の子どもたち – その笑顔(えがお)の向こう側(がわ) 1 スラムのくらし』(外部リンク)
サバンナで有名なアフリカのケニアで、スラムに暮(く)らす人々(ひとびと)をしょうかいした写真絵本です。
スラムの子どもたちは元気ですが、つらいできごとも起こります。スラムについて知り、日本の私(わたし)たちの生活と比(くら)べながら、世界の人々が直面(ちょくめん)する貧(まず)しさについて考えることができます。

『みんなが知りたい!自然災害(しぜんさいがい)のすべて 日本でおきる災害(さいがい)のしくみから防災(ぼうさい)へのとりくみまで』(外部リンク)
さまざまな自然災害(しぜんさいがい)について、その仕組みやえいきょうを気象予報士(きしょうよほうし)・防災士(ぼうさいし)である著者(ちょしゃ)が写真や図を使って解説(かいせつ)しています。
災害(さいがい)への備(そな)えだけでなく、いざというときにとるべき行動や避難所生活(ひなんじょせいかつ)のこともしょうかいされており、災害(さいがい)と防災(ぼうさい)、もしもの時の正しい行動まで分かるようになっています。
まわりの人に話を聞いてみよう!
- お父さんやお母さん、おじいさんやおばあさんに、地方から都市に移(うつ)り住んだことがあるか、または移(うつ)り住んだ人を知っているか聞いてみよう。なぜ移(うつ)り住んだのか、または移(うつ)り住まなかったのか、という理由についてもたずねてみよう
- また、子どものころと今とを比(くら)べて、人や建物(たてもの)がどのくらい増(ふ)えた/減(へ)ったなど、まちにどういう変化(へんか)があったか聞いてみよう
- もし災害(さいがい)が起こったときにどういう行動をとればいいか、家族や友だちと話し合ってみよう
- いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう
自分にできることからやってみよう!
- 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
- 世界のスラム街(がい)に住む人をサポートしている団体(だんたい)とつながる、空気をよごさないよう、できるだけ歩いたり自転車を使ったりする、災害(さいがい)が起こったときに持ち出すものをリュックにまとめておく、などできることはたくさんあるはず
自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!
一般財団法人(いっぱんしゃだんほうじん)CHANG(ちゃん)アジアの子供財団(こどもざいだん)(外部リンク)
東南アジアのスラムや孤児院(こじいん)に寄付(きふ)をしたり、子どもたちが教育を受け自立していけるようにサポートしたりしている団体です。
サイトでは、支援(しえん)をしている国々の状況(じょうきょう)をしょうかいするページや、現地で行っているプロジェクトのレポートを見ることができます。
また、主に小学生を対象(たいしょう)にクイズを交えて楽しく海外の文化を学ぶ「CHANG(ちゃん)子ども地球大学」も開催(かいさい)しています。
TOKYO環境学習(かんきょうがくしゅう)ひろば(外部リンク)
子どもから大人まで環境(かんきょう)に関心(かんしん)を深めてもらうために、東京都環境局(とうきょうとかんきょうきょく)が運営するウェブサイトです。
地球温暖化(ちきゅうおんだんか)や自然環境(しぜんかんきょう)など、キーワードにもとづいた分かりやすい解説(かいせつ)で環境(かんきょう)について学ぶことができます。
また、解答(かいとう)すると環境問題(かんきょうもんだい)への理解(りかい)が深まるクイズのほか、東京の近くで環境(かんきょう)について学べる体験(たいけん)プログラムやイベント情報(じょうほう)のページもあります。
あそび防災(ぼうさい)プロジェクト(外部リンク)
「防災運動会(ぼうさいうんどうかい)」や「防災ヒーロー入団試験(にゅうだんしけん)」「防災謎解き(ぼうさいなぞとき)」など、防災(ぼうさい)を体験型(たいけんがた)のエンターテインメントにすることで、大人も子どもも楽しく遊びながら防災(ぼうさい)を考えるきっかけをつくるプロジェクトです。
イベントを楽しみながら、もしものときに必要な「自分で助かる、他人を助ける」知恵(ちえ)や経験(けいけん)を得(え)ることができます。
関連(かんれん)記事:
防災訓練(ぼうさいくんれん)に必要(ひつよう)なのは「遊び」?防災(ぼうさい)を社会に広げるための楽しい仕掛(しか)けづくり(別タブで開く)
イラスト:KIKO
[参考文献]
United Nations SDGs Report 2023「11.SUSTAINABLE CITIES AND COMMUNITIES」(外部リンク)
United Nations「World Urbanization Prospects The 2018 Revision」(外部リンク/PDF)
WHO「9 out of 10 people worldwide breathe polluted air, but more countries are taking action」(外部リンク)
気象庁「平成30年7月豪雨(前線及び台風第7号による大雨等)」(外部リンク)
日本地震学会「FAQ 1-6. 有感地震の頻度(2015年9月修正)」(外部リンク)
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