難病児支援団体とご家族の新たなつながりを築く「第2回ワクワクつながる祭典」開催
難病児支援団体と家族の新たなつながりを築く
難病を抱える子どもたちとその家族を支援する団体は、全国で活動をしていますが、支援団体同士の出会いやネットワーク作り、そして新たなつながりを築く場を設けることが課題となっています。
そうした中、支援団体や当事者、そしてその家族が直接顔を合わせ、交流できる機会をつくろうと、難病児向けにプロのステージパフォーマンスを提供しているNPO法人心魂プロジェクトが中心となり、2025年3月に横浜・大さん橋ホールで「第2回ワクワクつながる祭典」が開催されました。このイベントは、TOOTH FAIRYの支援を受け開催され、難病の子どもたちのために活動する17の団体と、たくさんの当事者とその家族が参加し、新たな交流やつながりが生まれました。
歌とダンスでつむぐ感動の瞬間

オープニングとエンディングに心魂プロジェクトがパフォーマンスを披露。ライトが当たり映画ライオンキングの「サークルオブライフ」が流れると、舞台で繰り広げられる歌声とダンスに観客全員の心が躍動します。
心魂プロジェクトでは、障害や重い病気を抱える子どもたちも「心魂キッズ団」としてパフォーマンスに参加しています。今回のイベントでは、キッズ団の子どもたちも心魂プロジェクトのメンバーの歌に合わせて踊りを披露。思いが溢れるパフォーマンスに、思わず客席の子どもたちは体いっぱいに歌い、立ち上がって踊り出します。普段はおさえていた感情に火が付きエネルギーが爆発したかのよう。時には笑い、時には心を震わせ、その場にいるみんなの思いがひとつになります。
心魂プロジェクトで共同代表を務める有永さんは、「ワクワクつながる祭典」について、次のように語ります。
「難病児や障害者支援に携わっている人の中には、世の中の熱量と浮いてしまい、マイノリティな気持ちになってしまう方もいる。でも、ここにはそれぞれ熱い思いを持った人たちしかいない。熱い思いの人達とつながることで、お互いに『私のやっていることは間違ってないんだ』と勇気をもらえると思うんです。」
また、有永さんは「ワクワクつながる祭典」を年に一度のみんなの再会の場にしたいという思いがあるといいます。
「心魂プロジェクトでは、バイバイやさよならを言わないようにしているんです。でもこの活動をしていると、また会うって正直難しいと感じるときがあります。例えば、一年前の『ワクワクつながる祭典』で入りたいと言ってくれた子がキッズ団として活躍をしてたんですけど、今年の初めに天にかえってしまいました。」
「また会うというのは本当に難しいことだと思います。でも、また一年間みんなそれぞれ頑張って、この会場で『また会ったね』と再会を喜び、お互いをたたえられるような、そんな祭典にしていきたいと思います。」
2026年3月に第3回が開催される予定です。
長期入院をする子どもと支える家族へのあたたかな支援

参加団体の1つであるNPO法人キープ・ママ・スマイリングは、入院中の子どもとその家族が安心して一緒に過ごせる社会を作ることを目指し、入院している子どもたちの家族に対して食事や物品の支援を行っています。
イベント当日、団体のロゴを使ったマグネット式の福笑いを親子で楽しめるブースを設置し、和やかな雰囲気を作り、多くの親子が楽しんでいました。
「ご家族で参加するイベントには、お子さんが楽しめる内容が大切だと思い、スタッフがこのアイデアを考えました。また、短時間で成果が見えるものですし、お子さんの自由な発想を親御さんが再発見できるのも、魅力の一つだと思います。」
さらに、ブースの中心には、長期入院に付き添うご家族のために生活用品を提供する「付き添い応援パック」の展示がありました。

「今回のイベントに参加されている方々の中には、既に知っていただいている方もいますが、まだ知らない方も多いです。しかし、実際に商品を手に取っていただくことで、『このパックを使ってみよう』と思っていただけたり、『他の人にもおすすめしよう』と言っていただくことが増えています。」
また、最近では応援パックの利用者や医療従事者の方から、「使ったことあるよ」「紹介したことあるよ」と声をかけられることも多いそうです。イベントを通じて、この応援パックを知ってもらう機会が増え、実際に利用する方も増えていることを実感していると、理事長を務める光原さんは語ります。
「普段はなかなか直接会う機会がありませんが、全国にはたくさんの団体があり、オンラインでは見かけても、リアルに交流するのは難しいです。でも、こういった大きな会場でさまざまな団体と直接会えることはとても嬉しいことです。オンラインでもつながることはできますが、やはり実際に会うと、気持ち的にやり取りへのハードルが下がります。」
「こうした場を提供してくださる心魂さんには本当に感謝しています。心魂さんへの愛があるからこそ、素敵な団体が集まってきているんだと思います。」
地域とつながり、共に育む

参加団体の1つ一般社団法人Buranoは、医療的ケア児や重症心身障害児とその家族がもっと欲張りに地域で生きていけるように、さまざまなプロジェクトを展開しています。
Buranoは、医療的ケア児への生活支援にとどまらず、子どもたちやその家族の未来を見据えた地域づくりや制度設計も重要だと考え、ケアが必要な子どもとその家族が、同世代や地域の人々と自然に繋がるためにさまざまな取り組みを進めています。2020年からは、異なる背景を持つ子どもたちが共に楽しむことができる地域イベント「キッズフェス」を開催し、2023年には、アウトドアブランドのスノーピークと連携し、医療的ケア児を対象とした「インクルーシブキャンププロジェクト」を立ち上げました。
今回のイベントでは、ブースに訪れた人に、キッズフェスで使用しているシールとインクルーシブキャンプで実際に使用している椅子や机が展示されていました。来場した子どもたちとその家族は、シールを専用の台紙に貼って、想像力を活かしてオリジナルの生き物を作ったり、椅子に座ってリラックスしながら談笑するなどし、それぞれゆったりとした時間を楽しんでいました。
理事の秋山さんは、事業を展開する中で、ケアが必要な子どもとその家族が、同世代や地域の人々と自然に繋がれることを大切にしているといいます。
「キッズフェスでは、子どもたちが探検隊になって生き物を発見するというコンセプトでイベントを行っています。具体的には、子ども一人一人に生き物の目や鼻、口になるパーツが渡され、そのパーツを交換したり、会場内のいろんなブースを回ってパーツを集めます。集めたパーツは台紙に貼って、自分だけの生き物を作ってもらいます。パーツは最初からいろいろな種類がセットで配られるのではなく、1種類のパーツが10枚入ったものが1人ずつ渡されます。ほかの子どもと交流しないと顔のパーツが集まらない仕掛けになっており、自然に友達と仲良くなることができるようになっています。」
「障害のある子どもたちも参加することを強調しすぎると、イベントの印象が啓発活動のように変わってしまいます。もちろん、ケアが必要な子どもたちへの配慮は大切ですが、ケアが必要かどうかに関わらず、さまざまな子どもたちが交流できる地域のお祭りとして楽しんでもらえるように、見せ方には細心の注意を払っています。」
また、インクルーシブキャンプでは、ケアが必要な子どもたちとその家族がキャンプを安心して楽しめるように、キャンプガイドブックやポータルサイトを作成・展開。知識経験やノウハウを広げ、自立してキャンプを楽しめるような工夫を行っています。
「キャンプに参加されるご家族の多くが、『どうやってキャンプ用品やキャンプ場を選んだらいいんだろう』と不安を抱えています。例えば、ケアが必要な子どもたちの中には呼吸器が必要な子もいらっしゃいます。実は、呼吸器の設置場所の確保や置き方はすごく重要で、もし万が一があったらその子の命に関わってしまいます。
そこで、冊子や公式ホームページ上でキャンプを過ごされたご家族の感想や、テントの中での医療器具のレイアウト、選んだキャンプ用品について紹介することで、少しでも前向きにキャンプを始めていただけるように工夫をしています。」
イベントでキャンプ用品や冊子を実際に触ってもらうことで、ご家族がキャンプを楽しむイメージが広がり、「キャンプに行ってみよう」と思うきっかけになるそうです。
日本財団では、難病を抱える子どもたちとその家族への支援を、日本歯科医師会との協同プロジェクト「TOOTH FAIRY」にて実施をしています。皆さまからの温かいご協力を引き続きよろしくお願いいたします。
文責:日本財団ドネーション事業部ファンドレイジングチーム