2025年度『夢の奨学金 第10期生』認定証授与式19人の新奨学生が日本財団に集合

一人ひとりに認定証が手渡される

「日本財団夢の奨学金」の奨学生として新たに加わる2025年度第10期生認定証授与式が、3月7日(金)に日本財団ビル(東京・赤坂)にて開催されました。今年度は19人が奨学生として認定され、当日は全員が日本財団に集まりました。これからの学生生活を支えるソーシャルワーカー、日本財団の担当職員らが祝うなか、日本財団笹川陽平会長から認定証が授与され、佐藤常務、高橋部長からの激励の言葉がありました。

授与式開会のあいさつ後、10期生それぞれに笹川会長より認定証が手渡されました。奨学生は名前を呼ばれると、「はい」としっかり返事をして壇上に進み、認定証を受け取り、笹川会長と記念写真を撮影。皆さん緊張した表情でしたが、笹川会長からにこやかに「リラックスしていいですよ」と声をかけられ、ほっとした笑顔も見られました。

写真:笹川会長より認定証を授与される奨学生

「あなたは日本財団夢の奨学金の奨学生であることを認定します。奨学生としての誇りと自覚をもって夢に向かって勉強や活動に励み、他の模範として自己の目標を実現されんことを期待します」と言葉をいただき、一人ひとり感激の面持ちで認定証を受け取りました。

日本財団笹川陽平会長より激励の言葉

第10期生全員へ認定証が授与された後、笹川会長より激励の言葉がありました。

「皆さんおめでとう。ほんとに素晴らしいですね。これから大学、大学院、専門学校へ進むと同時に、社会の一員として生活していくことになります。夢と希望でいっぱいだと思います。もちろん、不安も悩みもあるでしょう。でも、悩みを抱えているのはあなただけではありません。いま外を歩いている人も皆、すべての人が悩みを抱えています。それが人生なのです。“人生というものは、重い荷物を背負って坂道を上るようなものだ”という言葉もあります。

人は皆、幸せになりたいといいますが、幸せってなんでしょうね。私は86歳になりましたが、“幸せはずっと続くものではない”と実感しています。それは刹那的なものです。記憶の美化作用というものが働いているのだと思いますが、むしろ、辛かったこと、悲しかったことが、いつしか素晴らしい思い出になります。辛く苦しいことを乗り越えたとき、「私もがんばってきた」と思えるようになるのです。

写真:日本財団会長 笹川陽平

少々お説教になるかもしれませんが、皆さんより長く生きて経験をしていますので、戦時中のことを話します。もうすぐ東京大空襲が起きた3月10日ですね。私の幼少期は過酷でしたが、なかでも東京大空襲のときは壮絶でした。10時過ぎに空襲警報が鳴り、夜空がどんどん真っ赤になっていきました。このとき私の母は高熱を出していて、とても逃げられる状態ではなかった。でもその手を取り必死で逃げました。

浅草の一角に町内会の人たちが集まっていましたが、次の避難場所の隅田川まではとても歩けない。6歳の私は母の手を引いて、逃げ惑う人の中をかき分けて進みました。焼夷弾で焼かれる人の悲鳴、生き地獄のような中を。それでも母は歩けなくなり、「あなた一人で逃げてください。これからは強く生きてください」と言いました。でも何とか二人で生き延びました。たった2時間半で約10万8千人の人が亡くなりました。

その後は遠い親戚の家で母の看病をしながら生活をしました。小学3年の頃から新聞紙に火をつけて薪を燃やしてご飯を炊いていました。今でいうヤングケアラーですね。その後の青春時代も孤独でした。でも今になっても思います。友達はそんなに多くはいらないものです。自分の話を本当に真剣に聞いてくれる人が3人居てくれたらいいと思いますね。

今はスマートフォンを使ったSNSの時代で、人間関係の築き方も複雑になってきていると思いますが、悩み事があったら、夢の奨学金のソーシャルワーカーの方々が必ず話を聞いてくれます。相談事があるなら私にも手紙をください。いい答えができるかどうかわかりませんが、生きてきた時代が異なるからこそ、何かヒントになると思います。

写真:奨学生たちの前で語る笹川会長

日本財団は、皆さん方を奨学金で支えるだけでなく、皆さんが将来のための学びを得てからも長くお付き合いしていきたいと思っています。ですから、自分だけが辛いとか、独りぼっちだと絶対に思わないでください。皆苦しんでいる、それが人生。でも前を向いて歩いていたら、必ず何とかなりますから。今日は皆さん本当におめでとう。」

自己紹介で進学先と将来の夢を表明

笹川会長の激励の言葉を受けて、10期生も自己紹介として、進学先と将来の夢を表明してくれました。笹川会長を囲んで和やかに進められました。

写真:奨学生たちの前で語る笹川会長

栄養や食の分野、医療の分野に進む人は、
「看護学科に進み将来は助産師を目指ながら、海外で働くことも視野に入れて英語も勉強したい」「この人になら任せられる、という看護師を目指したい」
「調理専門学校で学び、将来は日本料理の料理人になり、日本料理のすばらしさを広めていきたいという夢があります」「畜産学部に進んで、食に関する仕事に就きたいです」「管理栄養士となって児童養護施設の子どもたちに心と体が元気になる食事を提供したい」と語りました。「現在は治療が困難とされるガンや難病の治療法を開発したい」と意気込む人や、薬学部に進みガンの専門薬剤師を目指す人もいました。

また、大学のサッカー部に所属し、これからプロサッカー選手を目指す人は「子どもたちに夢を与える存在になりたい」と語ってくれました。国際関係の大学で学ぶ人は、英語の教師を目標にしつつ、コーヒーが好きなので海外のバリスタの世界にも触れたいと夢を語りました。

教育や福祉関係に進んだ人も多く、「小学校の先生になりたい」大学院で学ぶ奨学生は、福祉関係の研究者として、根拠を持って支援を提供できるための研究者になりたいと語りました。さらに、国際的な大学に進んだ人は「将来は貧困問題とキャリア教育を組み合わせたソーシャルビジネスを展開したい」とチャレンジングな夢を語ってくれました。会計学を学ぶ人、幼児教育、それぞれの夢や目標を語ってくれました。

笹川会長へは「幼少期から何歳まで、周囲の方々のお世話をしていたのですか」など質問が挙がり、しばし懇談しました。

笹川会長からは、
「皆さん、夢や希望に溢れていらっしゃる。目標を持つことは本当に素晴らしいことで、ぜひその道に進んでいただきたいと思います。でも場合によってはうまくいかないこともあります。進む道が変わってもいいのです。くじけないで前へ進めば、どんな長いトンネルでも出口はあります。どんな暗い夜でも夜明けは来ます。ですから、なんとかなるという気持ちで、楽観的に生きていくことが大事です。

改めて、皆さん方は1人ではありません。ソーシャルワーカーの先生方、日本財団の職員も支えています。何かあれば遠慮なく、相談してください。今日は本当におめでとうございました」と会を締めくくりました。

授与式終了後は、恒例の記念撮影が行われました。「ここからスタート!」という思いを新たに、皆さん笑顔で写真に納まりました。