“伴走者”という仕事日本財団夢の奨学金ソーシャルワーカーのご紹介

事情があって家庭で暮らせない子どもが受ける社会的養護。その出身者を対象にした返済不要の給付型奨学金制度である「夢の奨学金」は、学費全額に加え生活費、住居費をカバーし、そして一番の特徴は、ソーシャルワーカーが奨学生ひとり一人を見守るサポート体制をとっている点にあります。数ある奨学金の中でも例の少ない、このユニークな任務を担っているソーシャルワーカーをご紹介します。
荒井和樹さんは、全国こども福祉センターの理事長で、大学で社会福祉を学んだ後、4年半児童養護施設で勤務。そこで社会的養護に至る前の予防支援の必要性と、同環境にいながらも保護未満となる子どもたち、アフターフォローの課題に気付きます。それらの課題提起と解決に向けて、荒井さんは不可視化されている、法的支援の外にいる子どもにアプローチするため路上に出向き、こちらから語りかける「声かけ」や、役割を生み出す「居場所づくり」活動(ボランティア、スポーツなど)を始めました。
荒井さんはメンバーと共に活動を継続。組織化し、全国こども福祉センターを設立。2017年に大学院で修士号(社会福祉学)を取得、子ども貧困対策事業で、アウトリーチ国内普及プログラムを実施しています。また、大学非常勤講師などを務めながら、家庭や学校に居場所がないと感じる子どもたちを対象に声かけをするため、現在も学生メンバーと共に毎週路上に立ち続けています。
高橋亜美さんは、アフターケア相談所ゆずりはの所長で、児童養護施設や自立援助ホームなどを退所した、困ったときに頼れる親やきょうだいがいない子どもたちのさまざまな相談に乗り、日々自立を応援する支援活動を行っています。高橋さんは、都内にある自立援助ホームで9年間にわたり支援スタッフとして働かれました。その間、高橋さんは施設を退所した後にこそ、安心して助けを求められる場の必要性を痛感し、2011年にアフターケア相談所ゆずりはを開所されました。ゆずりはには、借金に困っている、住む場所がない、予期しない妊娠や出産をしたなどの相談が寄せられ、相談件数は年間1万件を超えています。高橋さんは、連絡を受けた相談者との個別相談のために、全国を飛び回っています。その他ゆずりはでは、施設や里親家庭などを巣立った人が働けるリンゴのジャムなどをつくる工房を設けており、また無料夕食会や、高卒認定資格取得のための無料勉強会なども行っています。
夢の奨学金は、新たに決まった3期生17名への奨学金認定証授与式を、今月末に東京の日本財団ビルで行います。3期生17名も、荒井さんもしくは高橋さんが寄り添います。そして、いよいよそれぞれのゴールに向かい、走り出します。
日本財団 公益事業部 国内事業開発チーム 芳川龍郎

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。