浸水した自宅に住み続けるための支援

写真:家屋の再建作業に取り組む学生ボランティアたち

平成30年7月豪雨によって多くの家屋が浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町。被災者の中には、浸水した自宅を解体せずに、これからも住み続けるという選択をした方もいます。そうした方たちにとって、自宅に入り込んだ土砂を取り除くなどの支援活動は、とても重要なものとなっています。

被災した家屋を再建する意義

真備町では平成30年7月豪雨により、町内を東西に流れる小田川や支流が決壊して、4,000棟以上の家屋で浸水被害が発生しました。そのうち2,000棟以上の家屋が全壊の判定を受けています。
政府は被害の深刻さを考慮して、従来は全壊のみが対象だった家屋の解体費用支援について、半壊や大規模半壊の家屋にまで適用範囲を拡大しました。その結果、浸水被害を受けた多くの被災者が公費で自宅の解体処分を行えるようになりました。

写真
真備町では4,000棟以上の家屋で浸水被害が発生した

一方、被災者の中には、「浸水した自宅を解体するのではなく、また住めるようにしたい」「今まで住んできた家にこれからも住み続けたい」という思いを持つ方が多く存在するのも事実です。また、被災者の生活再建を中長期的な観点で考えた場合にも、住み慣れた家を残すということは復興への選択肢を広がることにつながります。
日本財団ではGakuvo(ガクボ:日本財団学生ボランティアセンター)を通じて、自宅を再建したいと願う被災者の方々を支援しています。8月10日には鳥取県から14人の学生ボランティアが、Gakuvoのメンバーとして真備町に派遣されました。

写真
学生ボランティアを引率した日本財団の村上
写真
鳥取県から14人の学生ボランティアが真備町に派遣された

「鳥取県では昔から農業が発展しており、みんなで支え合って作業をするという文化が根付いています。そのためにボランティアに対する学生の意識も高いんですよ」
学生ボランティアを引率した日本財団 鳥取事務所の村上が説明してくれました。鳥取県と日本財団は日本一のボランティア先進県を目指した共同プロジェクトを平時から取り組んでいます。

「被災者の方が自宅を解体する場合には、また新たに家を建てる必要があります。しかし、様々な理由により家を建てられない被災者も少なくありません。そうした方たちは、東日本大震災のときのように、長期間にわたり、仮設住宅での生活を強いられるかもしれない。そうした事態を避けるためにも、浸水した自宅にまた住めると思ってもらうことが重要なのです」
被災地で重機を使った支援活動を続けている日本財団職員の黒澤が、自宅を再建することの意義について学生ボランティアに説明しました。

家屋の再建で学生ボランティアが果たす役割

「床下から泥をかき出す作業をすると説明されたときには、すぐに終わると思っていました。でも、いざ作業をしてみると、床板を支えている梁(はり)のために作業スペースが狭くなり、予想以上に時間がかかりました」
Gakuvoのメンバーとして床下から泥を取り除く作業をしていた田村岳大さんと竹内雄哉さんは、作業の大変さを実感しているようでした。

写真
床下から泥を取り除く作業について説明する竹内さん(写真左)と田村さん(写真右)

「テレビで災害の様子を見たときは現実感がありませんでした。今回は被災地の実情を知りたくてボランティアに参加しました。床下にこびりついていた泥を高圧洗浄機で取り出しましたが、なかなか大変な作業ですね」
同じくGakuvoのメンバーとしてボランティアに参加した小谷悠果さんが、被災した家から泥を取り除く大変さについて説明してくれました。

写真
高圧洗浄機で床下の泥を取り出した小谷さん

今回のボランティア活動ではGakuvoのメンバーが二手に分かれ、床下の泥を取り出して消毒する作業と、壁から内装材や断熱材を取り剥がす作業を行いました。どちらの作業現場でも、学生ボランティアのみなさんが汗を流して作業に励んでいました。

写真
壁から剥がした断熱材をトラックに詰め込む学生ボランティア
写真
浸水した家屋の消毒作業を行う学生ボランティア

支援を受けたことで芽生えた住宅再建への希望

「はじめは足元にチョロチョロと水が来ていただけでしたが、気づいたらあっという間に家の2階まで浸水してしまった。屋根に登って助けを求めたら、消防の人たちがボートで救出してくれました。3日後くらいに自宅に戻ったら、家の中がめちゃくちゃで大変でしたよ」
Gakuvoのメンバーが土砂の取り除き作業を行った家屋で暮らしていた被災者の方が、浸水したときの様子について説明してくれました。
「真備町は平成30年7月豪雨の前から、人口が減ることはあっても増えることはない地域でした。それなのに被災した人たちが自宅を更地にしてしまったら、もうこの地域には誰も人が入って来なくなると思う。最近はボランティアをはじめとしたみなさんが支援をしてくれるので、何とかまた住めるんじゃないかという希望が出てきました」
被災した自宅を取り壊さずに修理する道を選んだ被災者の方が、胸の内を明かしてくれました。

写真
浸水した自宅に再び住めることへの希望を語る被災者の方

浸水した家屋に再び住むためには、家屋から土砂を取り除く作業、床下の消毒作業など今やらなければならない作業が山のようにあります。今後も日本財団ではGakuvoを通じて学生ボランティアを被災地に派遣することで、被災した方々の復興に少しでもお役に立てるよう支援活動を続けていきます。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト) 
写真:瀧波 崇(株式会社サイエンスクラフト)