浸水した家を修理するために被災者が必要としているもの

写真:修理中の家の木枠に、メッセージが書かれている

平成30年7月豪雨災害で広範囲の浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町では、被害エリアがあまりにも広くボランティアでできることにも限界があるため、被災者自身が家を修理しています。そのために、家を修理するために必要となる車両や工具類が今被災地では求められています。災害支援団体『風組関東』はこのニーズに応え、日本財団から支援を受けて軽トラックや工具などの貸し出しを行っています。

住宅再建用に軽トラックや工具を貸し出す重要性

倉敷市真備町では平成30年7月豪雨災害によって5,000棟を超える住宅が浸水しました。浸水した家を再建するためには、使えなくなった家具を廃棄する作業、家に入り込んだ汚泥を掻き出す作業、洗浄・消毒する作業、乾燥させる作業、などの応急修理で多くの人手が必要になります。
これらの作業を手伝うために、日本全国から真備町にもボランティアが駆けつけましたが、あまりにも浸水被害が広範囲に渡っていることから、ボランティアでは全ての家をカバーすることができないのが実情です。真備町で浸水した家の約半分の応急修理が、自分自身・家族・友人の手によってされているとも言われています。

そのために真備町では家の応急修理を自分でするための知識や工具類を必要としている被災者の方が多く存在しています。この被災地でのニーズに対応するために、風組関東は『日本財団 復興支援センター』を運営し、様々なノウハウを元に住宅再建用の軽トラックや工具などを被災者に貸し出しています。
「軽トラは20台~30台分くらい貸し出しています。工具も既に100個近く被災者の方に貸し出しています。工具は1週間くらい借りていかれる人が多いですが、送風機などはもっと長期間の貸し出しになることが多いです」
風組関東の代表を務める小林直樹さんが軽トラや工具の貸し出し状況について説明してくれました。

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住宅再建のために工具類を貸し出す重要性について説明する小林さん
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日々被災した住民からの相談を受けつけるセンター長の小林洋介さん。事務所には様々な種類の工具が置かれている。
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事務所の外には貸し出し用の軽トラが準備されている

床板を剥がすバール、水を外に出すためのポンプ、洗浄するための高圧洗浄機、乾燥させるための送風機。復興支援センターの事務所には家を再建するために必要なありとあらゆる工具類が置かれており、事務所の外には運搬用の軽トラも何台か置かれていました。軽トラックや工具など日常では使わないものを手軽に借りることができるので、多くの被災者が復興支援センターの貸し出しを利用しています。

『工具類の貸し出し』と『技術的なノウハウ』の両方を提供する

「工具を借りに来た人がいたら、まず何で借りようと思ったのか話を聞いてみます。作業方法に困っていることがあれば技術的なアドバイスをしますし、人手が足りなそうであればボランティアを送れないか当たってみることもあります」
小林さんが工具を貸し出す際の流れを説明してくれました。

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浸水した家の壁にはカビが発生するなど素人ではどうすれば良いか分からない問題がたくさん発生する(写真提供:風組関東)

風組関東は2004年の新潟県中越地震がきっかけで発足し、災害が発生する度に日本各地で活動をしています。そのために災害対応に関するノウハウを多く持ち合わせています。また、もともと技術系の人員で構成されていることもあり、ただ単に工具類を貸し出しているだけではなく、家を応急修理するためのノウハウもここでは提供されています。
工具類の貸し出しと技術的なノウハウの両方を提供することで、自分自身の手で家を応急修理しなければならない状況になった被災者の方々を風組関東は支えています。

被災地で求められている復興支援センターの役割

「災害から数日して水がひいたので家に戻ったら、まるで家の中全体が洗濯機にかけられたかのようにぐちゃぐちゃになっていました」
倉敷市真備町の川辺地区に住む宮﨑さんが災害後しばらくして家に戻った時の様子を説明してくれました。川辺地区では決壊した川の水が広範囲に渡って入り込んだために、多くの家が宮﨑さんの家のように被害を受けました。

「浸水した家の整理をしようと思ったのですが、資材を運ぶための足がないからどうしたものかと困っていました。使えなくなった家具を運んだり、工具や資機材を運んだりするために軽トラがどうしても必要なため避難所で相談したところ、復興支援センターを紹介されました」
宮﨑さんが復興支援センターで軽トラックを借りた経緯について教えてくれました。

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復興支援センターから貸し出された軽トラを運転する宮﨑さん

真備町では豪雨災害からしばらくして台風が上陸したのですが、宮﨑さんの家はその台風が原因で家の中にカビが発生してしまいました。どうしたら良いのか困っていた際に風組関東に相談をしたところ、家に使われている木材の湿度を測ることや、エタノールで消毒することなどのアドバイスを受けたそうです。

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浸水した宮﨑さんの家は再建に向けて着々と進んでいる

災害直後の限られたリソースの中で、軽トラックを借りることができて、技術的なアドバイスも受けることができたので、風組関東は大きな支えになったとのことでした。

日本財団は、復興支援センターに軽トラや工具、事務所を用意することに加え、皆様からお預かりした寄付金を特に水害対応において専門性の高い風組関東に活用いただくことで被災地を支えています。被災地で活躍する専門性の高い支援団体を支援させていただくことで、一刻も早い復興につながればと考えます。

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト)
写真:和田 剛