被災地を支援するための、高校生による自発的な取り組み

写真:『MABI PAPER』編集メンバーの集合写真

平成30年7月豪雨の被害を受けて、多くの人によって被災地を復旧・復興するための支援が行われています。岡山県内に住む高校生たちは、一般社団法人SGSGの支えのもとに、被災地に明るい情報を提供するために『MABI PAPER』を発行しています。

被災地支援のために何かできないかと考えているのは大人だけではない

平成30年7月豪雨災害は被災地に大きな被害をもたらしました。この災害を受けて、復旧・復興のために何か自分たちにもできることはないかと、被災地には日本全国からボランティアやNPOが集まっています。

避難所の運営支援、土砂の掻き出し支援、炊き出しの手伝い。被災地ではこれまでに様々な支援が行われてきましたが、何らかの形で被災地を支援することができないかと考えているのは大人だけではありません。岡山県内の高校生たちも自分たちで被災地のために何かできないかと自発的に考え、『MABI PAPER』という新聞を発行しています。

写真:マガジンスタンドに並べられた『MABI PAPER』
被災地の支援のために何かできないかと考えているのは大人だけではない

岡山県内の高校生が被災地の『明るい情報』を発信

「MABI PAPERでは被災者の声を交えながら、被災地のポジティブな情報を中心に発信しています。被災地に少しでも明るい情報を届けたい、被災された方の声を集めたい、という想いから活動を始め、第1号を8月10日に発行して以来、定期的に情報発信を続けています」
MABI PAPER編集長の若狭さんが概要について説明してくれました。

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MABI PAPERについて説明する編集メンバー

MABI PAPERは高校生の目線で被災地の明るい話題を提供しています。災害や被災と聞くとどうしてもネガティブになりがちが、逆にポジティブな情報を発信することで被災地を元気付けようと取り組みを続けています。もともとMABI PAPERの始まりは、豪雨災害直後の7月9日に高校生たちが集まり、被災地に明るい情報を伝えることで被災者の方を元気付けることができるのではないかと考えたのがきっかけでした。それ以降、定期的に被災地の情報発信を行い、今では10人前後の高校生がMABI PAPERの制作に携わっています。

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MABI PAPERの制作に深く携わっているメンバー(写真左から安藤さん、片岡さん、若狭さん)

また、MABI PAPERには避難所に訪れて被災者の声を直接伝えるという特徴もあります。
「最初の頃は避難所に行って被災者の方に声をかけるのが大変でしたが、被災者に寄り添ってお話しを聞くことで、少しずつ信頼されていきました」
編集メンバーが被災者の声を聞き出す大変さについて説明してくれました。何度も避難所に訪問しているうちに被災者の方とも顔見知りになり、被災者の本音を聞き出すことができるようになってきているとのことでした。

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MABI PAPERは被災地の明るい情報を多くの被災者に届けている

高校生が自発的に活動できるフィールドを提供する

MABI PAPERの活動を影で支え続けているのが一般社団法人SGSG理事長の野村泰介さんです。一般社団法人SGSGでは小学生から高校生に対し多様な学びの機会と場を提供しており、MABI PAPERもSGSGの1つのプロジェクトとして動いています。
「もともとは学校で働いていたのですが、学校では実現できない教育の方法もあると考えて独立することにしました。大人が段取りを全て決めて完璧なものを作るのではなくて、学生が自発的に活動することが大切です。そうすることで、今の学生が5年後~10年後に自分の本当にやりたいことが出来るようにしたいです」
野村さんが学生に対して学校とは別の角度から教育する想いを語ってくれました。

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学校とは違う角度で学生を教育する想いを語る野村さん

SGSGには岡山県内の10を超える学校から学生が参加しており、MABI PAPER以外にもさまざまな活動をしています。その中の1つが『募人箱』です。募人箱はお金ではなくてスキルを寄付するものであり、自分の得意なことで協力できることを紙に書いてポストに投函すると、そのスキルを求めている人とマッチングさせることが出来ます。

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募人箱のポストを制作する学生たち

更に今後の予定として、倉敷市真備町の中学生を集めて文化祭を開催することを企画しています。浸水による影響で、真備町の一部の中学校では文化祭が中止になりました。しかし、文化祭は学生にとっては一生に一度しかない重要な学校のイベントです。

その機会を失うということは、被災地の中学生にとって大きな損失であると考え、SGSGは岡山城に真備の中学校から学生を集めて、共同の文化祭の開催することを決定しました。この文化祭も高校生が主体となって、企画・運営が進められているそうです。SGSGの支えの元に、災害によって失われた教育の機会が、高校生の手によって取り戻されようされています。

日本財団は今回ご紹介したSGSGをはじめ、被災地で活動している支援団体へ助成事業を行っています。被災地で活動している支援団体に少しでも協力することで、一刻も早い復旧・復興につながればと考えております。

写真:SGSGの外観
SGSGは高校生の自発的な活動を通して被災地を支援している

取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト)
写真:和田 剛