被災者の2年後の生活を考えた支援の在り方

平成30年7月豪雨から数カ月が経ち、避難所から仮設住宅に移って新たな生活を始めている被災者の方が増えてきています。しかし、仮設住宅に移った後の生活がどうなるのか、被災者は新たな不安を抱えています。兵庫県立大学減災復興政策研究科支援チームでは、生活再建に向けたセミナーを開催して、被災者の不安を取り除いています。
避難所から仮設住宅に移っても被災者の不安は無くならない
平成30年7月豪雨から数カ月が経ち、これまで生活していた避難所から仮設住宅に移って新たな生活を始めている被災者の方が増えてきています。広島県安芸郡坂町でも土砂災害により多くの被災者の方が避難所での生活を余儀無くされていましたが、坂町が提供する仮設住宅に多くの方が移り住んでいました。
仮設住宅に移り住むことで避難所よりも住環境が改善されていく一方、多くの被災者の方が今後の生活について先が見えずに不安を感じています。兵庫県立大学減災復興政策研究科支援チームでは被災者に寄り添って、災害のフェーズに合わせて発生する問題を解決するためにさまざまな活動を行なっております。最近では「復興塾」という生活再建に向けたセミナーを開催しました。

「私は熊本地震で被災して仮設住宅に入っていました。仮設住宅に入った後からも、みんなで輪を作って愚痴をこぼし合うのが良いと思います。復興はみんながまとまらないとできませんので」
熊本地震の経験者が被災者に語りかけました。

実際に熊本地震で仮設住宅に入られた方をゲストスピーカーとして招待することで、これから仮設住宅での生活が始まる坂町の被災者の方々は、生活再建に向けた認識を深めているようでした。
「坂町では避難所から仮設住宅へ被災者の方々の生活の場所が移りつつあります。仮設住宅を出た後の生活がどうなるのか、過去の災害事例を参考にしながら将来的なことを考えるための材料になればと考えています」
運営スタッフの一人がセミナー開催の意図を説明してくれました。セミナーには18人の参加者が出席しており、熱心に話を聞いていました。
一般的に仮設住宅は2年間で出て行かなければなりません。土砂災害によって住宅を失った被災者の方は、2年後に仮設住宅を出た後にはどこに住めばよいのか大きな不安を抱えているようでした。そんな被災者の不安を取り除くために、復興塾では熊本地震の経験者や大学教授の専門家をセミナーに招いて生活再建の流れを説明していました。
「兵庫県立大学の人たちが助けにきてくれるのはとても助かっています。行政からも住民向け説明会はあったのですが、長期的なビジョンがなかなか見えませんでした」
仮設住宅に暮らす被災者の方が、セミナーに参加した理由を説明してくれました。

ボランティアやNPOは「下請け」ではない
「大学本体として活動するとどうしても制約が多いです。自由な発想で被災地の支援活動をやった方がいいと考え、兵庫県立大学減災復興政策研究科支援チームとして被災地入りしました。現在は約15人の院生が中心になって活動しています」
今回のセミナー活動の運営を行なっていた頼政良太さんが団体発足のきっかけを教えてくれました。
兵庫県立大学減災復興政策研究科支援チームでは今回のセミナーだけではなく、さまざまな支援活動をされています。発災直後の7月13日から広島県安芸郡坂町に入り、まずは避難所の住環境の改善するために、トイレ清掃をはじめとした衛生面の管理、ダンボールベットの設置などを行いました。避難所から仮設住宅に被災者が移る際には、大きい家具の移動など、ボランティアセンターに頼むほどのことではないけど被災者自身ではできないことも支援されたそうです。災害の段階に応じて必要な支援を提供することで、被災者との信頼関係を構築しており、それが継続的な支援につながっているようでした。

「被災地では、NPOやボランティアと言うと、まるで下請けのように思っている人も多く、支援団体がただの使い走りになっているケースも見受けられます。単純作業はNPOやボランティアにやらしておけばいいと考えている方もいらっしゃいます。しかし、災害対応は行政の職員に頼るだけではできません。そのために、私たち支援団体が社会の中で認知され、活動の質をもっと上げていかなければなりません」
頼政さんが被災地での支援に対する想いを語ってくれました。

日本財団は兵庫県立大学減災復興政策研究科支援チームの被災地での活動を支援しています。被災地での生活再建はまだ始まったばかりです。
取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト)
写真:和田 剛