平時の頃からの繋がりを活用して被災地を支援する

平成30年7月豪雨についてマスコミで報道される機会は減ってきていますが、災害の影響は未だに被災地に大きく残っています。「NPO法人ふぁいと」では、平時からの人間関係の繋がりを活用して、被災者に必要とされている支援を提供しています。
いま被災地で必要とされている支援を提供する
平成30年7月豪雨は広島、岡山、愛媛の3県を中心に大きな被害をもたらしました。発災当初はマスコミでも大きく報道されましたが、月日の経過とともに報道される機会は次第に減ってきています。しかし、災害の影響は未だに被災地に大きく残っており、被災地を復旧・復興するためにさまざまな支援団体が活動しています。
広島県三原市本郷を中心に活動する「NPO法人ふぁいと」もそんな支援団体の一つであり、食堂での食事提供、保健室での健康診断、休息室での被災者同士の交流の場作りなど、いま被災者に必要とされている様々な支援を提供しています。
「豪雨によって自宅は1メートルくらい浸水したので、避難所で2週間生活をすることになりました。自宅に戻ると砂壁は崩れ落ちており、1階の家電類は使えなくなっていました。そのために今は自宅の2階で避難しています。平日は働いており、土日に1階の片付けをしなければならないので、ご飯を提供してくれるこのような場が土日に開催されていることはとてもありがたいですね」
食堂でご飯を食べていた被災者の家族が胸の内を語ってくれました。

豪雨により自宅の一階部分が浸水したために、水が浸からなかった2階で生活を続けている被災者の方がこの地域には多くいるそうです。平日は仕事があるために、浸水した1階の整理をするのは土日に限られており、被災から月日が経った今でも片付けには時間がかかっています。NPO法人ふぁいとでは、このような現地でのニーズを読み取り、食堂で食事を提供しています。
NPO法人ふぁいとの食堂では、毎週土日に被災者の方々に管理栄養士さんが考えたバランスの取れた食事を提供しています。炊きたてのご飯、具沢山のみそ汁、酢豚、サラダ、フルーツ、菓子パン。この日の献立も美味しくて、栄養バランスの考えられたメニューでした。

「給食センターが浸水してから、学校の給食では小さいお弁当が渡されるだけになり、最近はまともな給食が食べられていませんでした。だから今日はお腹いっぱい昼ごはんを食べることができて嬉しかったです」
ご飯を食べに来ていた中学生が感想を教えてくれました。
三原市本郷地区では小中学校に給食を提供する給食センターが被災し、浸水により設備に大きな被害が出ました。そのために今までと同じようには給食の提供ができない状況が続いており、食べ盛りの中学生にとっては物足りない食生活が続いています。
食事の提供以外にも、被災者にとっていま必要なものは何かに着目し、健康診断や休息場所の提供による被災者同士の交流など、さまざまな支援を行っています。「最初の頃は被災者同士が話をせずに、ただご飯を食べるだけでしたが、今では気を許したのかお互いに世間話をしています」
スタッフの一人が説明してくれました。継続して支援活動をしていく中で、スタッフと被災者同士も顔見知りになり、コミュニティが出来上がっているようでした。

活動に共感して多くの協力団体が集まっている
「うちのお客さんにも被災した人がいたからね。被災したそれぞれの個人には、どうしても直接支援できないけど、この団体のように広く意義のある支援を行っている団体へは協力をしていきたいです」
食事の提供に必要になるガスを供給している、地元のガス会社の方が協力する理由について語ってくれました。

NPO法人ふぁいとは、さまざまな協力団体・支援者によって支えられています。ガスの供給、野菜や菓子パンの提供、鍼灸師による施術、地元の学生によるボランティア。活動内容に共感して多くの協力が集まっています。

「学校の先生から案内を受けたので、ボランティアとしてここで活動しています。何度かここでボランティア活動しているので、最近では被災者の方に顔も覚えられ始めているようで嬉しいです」
食事提供の手伝いをしていた地元の中学生が、ボランティアをしようと思った経緯を説明してくれました。

「平時に地域の他のみなさんとどう繋がっているのかが、災害時にも重要になります。もともとの繋がりがあれば、災害時にもお互いに協力していけます」
NPO法人ふぁいとの代表を務める平本英司さんがここまで協力団体を集めることができた理由について説明してくれました。被災者への呼びかけについても、LINEやFacebookで地域の人たちに食事の提供を行う旨を伝えたところ、初日から100人以上が集まったそうです。
平時から人と人との繋がりを大切にして人間関係を作っておき、LINEやFacebookなどのツールを災害時にも臨機応変に活用することで、より広く、効果的な支援を行っていました。

日本財団もNPO法人ふぁいとの活動内容に共感し、支援を行っております。支援を通して、被災地の一刻も早い復旧・復興に少しでも貢献できればと考えています。
取材・文:井上 徹太郎(株式会社サイエンスクラフト)
写真:和田 剛