キャンプで糖尿病の自己管理を学ぶ公益社団法人 日本糖尿病協会

糖尿病と共に生きていく

小児1型糖尿病を知っていますか?
糖尿病には二種類あり、生活習慣病が主な原因として知られる成人に多いものが2型糖尿病。食事療法や運動、服薬などが主な治療となります。
それに対して子どもの発症が多いものが小児1型糖尿病。血糖値を一定に保つ働きをするインスリンを作る膵臓の細胞が何らかの理由で壊れてしまう病気で、発症に生活習慣は関係ありません。発症率は10万人に一人から二人ともいわれます。放っておくと身体のさまざまな機能が低下し、命に係わる危険な状態に陥ってしまいます。血糖値をコントロールするためのインスリン注射を毎日数回することが必要で、それは一生続きます。

子どもたちは大変な治療を頑張っているにもかかわらず、食べすぎや運動不足が原因だという誤解も多く、心無い言葉に傷つけられることも。自己管理をしてインスリン注射をすれば健常の子どもと同じように過ごせるのですが、情報不足による不安からか、保育園や幼稚園から入園を拒否されることもあるといいます。入学しても学校で糖尿病の子どもは自分一人だけというのが大半で、子どもと家族は社会や学校で孤立しがちです。

そんな子どもたちの状況を打開しようと、病気について学び自己管理能力を身につけ、わかりあえる仲間作りをするための小児糖尿病キャンプが全国約50カ所で行われています。初めて開催した1963年から55年間で、約4万5000人が参加しました。

写真:東京わかまつ会サマーキャンプ2016の参加者たち
海で思いきり遊んだあとに、みんなで記念撮影。子どもたちをたくさんの大人がサポートしています

仲間との出会いが心の支えに

運動会、山登り、山菜摘み、海水浴、バーベキュー、キャンプファイヤーなど、日本各地で開催されるキャンプでは、地域の特色を生かし、自主性を尊重したプログラムが行われています食事や就寝前には自分で血糖値を測りインスリン注射をするなど、自己管理能力を身につけるのも大切な目的のひとつ。夜にはグループで悩みを話し合ったり、勉強会を行います。

キャンプには子どもだけが参加するものと、親子が一緒のものがありますが、親も参加できるキャンプでは、親同士の交流が生まれ、病気とのつきあい方の工夫や、子どもが学校でうまくやっていくための情報交換などがなされます。1型糖尿病は突然発病するため、そのことを受け入れられない親もいますが、同じ立場の親と話し共感することで、病気の子どもを受け入れる準備ができていくそう。
一方、子どもだけが参加するキャンプでは、親は病気の子どもにつきっきりの日常から束の間解放され、他のきょうだいとゆっくり向き合う時間を過ごすことができるのです。

子どもたちはキャンプのさまざま場面で血糖値をコントロールするための自己管理について学びます。仲間から良い刺激をうけることも多く、それまで自己注射がこわくてできなかった小さな子どもが、仲間が自分でしているのを見て、初めて自分でも注射ができるようになったという感動の場面が、全国のキャンプでくり広げられています。

学校では言えない悩みを、仲間や先輩に打ち明けることができ、愚痴も言えます。悩んでいるのは自分だけではなかったことに気づき、お互いの経験を共有し、励まし合い、それが心の支えになるのです。

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スタッフ手作りの紙芝居で、食事の摂り方やインスリンの作用などを学びます

希望、そして人生の目標がもてた

キャンプでは子ども1人につき2人ぐらいのボランティアスタッフがつき、目を離さずに細かい変化を見守ります。
キャンプは全てボランティアスタッフが運営しています。医療従事者、医学生、製薬メーカーや血糖測定機器を作っている会社の社員もいて、皆、有給休暇を利用して参加しています。かつて病児としてキャンプに参加したOB、OGもボランティアとしてキャンプに戻ってきます。子どもたちは先輩と触れ合うことで、この病気でも頑張れば大人になって活躍していけるんだと、自分の将来に希望や勇気が湧き、人生の目標を持てるようになるなど、自己効力感があがることも大きな効果です。

医療スタッフには治療の悩みを相談したり、新しい治療の話を聞くことができます。その治療を受けている仲間の話をきいて自分もやってみようという気持ちをもつことも。また、キャンプ参加後に医療に従事することを目指して夢を実現した子どもも多くいます。

一方、医療者の気づきも大きいといいます。病院の診察時間は15分ほどですが、キャンプでは朝から晩まで子どもといっしょです。寝ている間に低血糖を起こす子どもや、運動の前後の血糖値の変化などを目の当たりにするため、子どもの生活全般に関する医療を考える貴重な機会となっています。参加した医学生の中からは、これをきっかけに糖尿病専門の医師を目指す人が多く生まれています。

「14歳のときに発症し、病気になった自分を受け入れられなかったのですが、高校生になりキャンプに参加して自分自身を見つめることができ、『糖尿病をもつ人生』を受け入れられるようになったのだと思います」と医師となり医療班のボランティアで参加したOGは語ってくれました。

子どもたちにとって小児糖尿病キャンプは、成長に必要な知識を得て健やかな生活を確保すると共に、病気と共に生きる心を育み、人との関わりを学ぶ場でもあるのです。

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運動の前に血糖値測定とインスリン注射を。自分で上手に注射ができるかな? 友だちが見守ります

公益社団法人 日本糖尿病協会

2017年度日本財団支援事業(Tooth Fairy)

1型糖尿病の子どもの自己管理力を高める学習キャンプ事業 全国約50カ所の野外活動ができる宿泊施設で、自己管理力を高めるキャンプを実施。小児期発症の1型糖尿病児(約1,100人)とボランティア(約4,500人)が参加。

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