長期化する休校期間をポジティブに乗り越える子どもたち
一斉臨時休校から2カ月半、長期化する休校
3月2日からの一斉臨時休校から2カ月半が経過しました。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される地域では、第三の居場所の受け入れ児童を限定したり利用時間を短縮するなどして必要最低限のニーズに応えるかたちをとっていますが、感染があまり拡がっていない地域では通常通り居場所を運営しています。休校開始当初はここまで長期になることは誰もが想定しておらず、いつまでこの状態が続くのか不安視するばかりでしたが、長期休校期間をよいかたちで運営している第三の居場所もあります。

朝から子どもを受け入れる体制に
徳島県は新型コロナ感染者が5名(5月14日時点)と他県と比較しても少ない地域ではありますが、学校は5月下旬までの休校が決まっています。第三の居場所鳴門拠点は2019年8月に開所したばかりの拠点で、3月に休校が始まってから午前中の子どもの受け入れも開始しました。
1日の流れは、登所、勉強時間、自由時間、昼食、自由時間、勉強、掃除、おやつ時の絵本の読み聞かせ、チャレンジタイム(週替わりの教育プログラム)、夕食、帰宅となっており、長期休校にあわせて特別なことを始めたわけではありません。ですが、子どもたちが拠点で長く過ごすことにより小さな変化が見え始めました。
少人数の楽しみからみんなでできる遊びへ、子どもの関係性の変化
鳴門拠点を利用している子どもは12名。これまで、男の子は男の子だけで走り回って遊び、高学年の女の子だけで好きな本を読み、所属する学校が同じ子ども同士で仲良くするなど、それぞれ気の合う子ども同士で時間を過ごしていました。しかし、最近はみんなでできる遊びをしようと子ども達自身が考え始めるようになりました。そのためシンプルな、ことわざかるたが人気で、1年生も既に読み札を暗記するくらい繰り返し遊んでいます。そして、何より夢中になっているのが、マインクラフトを使った週1回のプログラミングの時間です。プログラミングのテーマは「みんなの街」、自分が建てたい家や動物園、建物の創作途中でお友達も加わり一緒に創り始めるなど、同じ仮想空間での協働作業を楽しんでいます!
鳴門拠点の代表を務める山びこへるぷの酒井美里さんは、「長時間共に過ごすことで子どもたち同士が仲良くなり、また下の子どもの面倒も見るようになりました。私たちも子どもたちそれぞれの特性が見えてきました。ピンチはチャンスですね」と、この2カ月半を振り返ります。


学習・生活リズムを保つことで学校再開もスムーズに
長期休校中は、学習・生活リズムの乱れや、友だちに会えないこと、やることがないといったストレスを子どもたちは感じがちですが、鳴門拠点に通う子ども達はそのようなストレスや学習・生活リズムの乱れが見受けられません。
「ストレスがあまりないのは、学校の代わりに毎日行く場所があるからでしょうね。保健室代わりの部屋でごろんと休みがちだった新1年生も、最近は学習リズムができてきて毎日上級生と一緒に机に向かっています。新1年生も含めて拠点に通う子どもたちは、学校が再開した際にはスムーズに学校生活に戻れるのではないでしょうか」
拠点が長期休校中の学校の代わりとなり、さらには生活も支えていると酒井さんは説明します。
「ひとり親家庭のなかには出勤時間が早いため、子どもが自分で朝食や昼食をつくらなければならない家庭もあります。そうするとどうしてもお湯を注ぐだけのインスタントに頼らざるを得ません。家にいれば偏りがちな栄養も、拠点で食事を食べることできちんと栄養を摂ることができます。今では、遠慮せずにいっぱい食べるようになりました」

ポジティブに乗り越えていく経験
鳴門拠点の活動からは、滞在時間が長くなったため子どもが自分たちの居場所を毎日掃除するようになったり、関係団体のおばあさん達が子ども用の布マスクをつくってくださったりと、今だからこそ培われる習慣や人との関係性も見えてきます。
ピンチをチャンスと捉えポジティブに今の状況を乗り越える経験は、子どもたちの成長にとって大切なことです。コロナ禍の影響がどこまで続くのか見通すことはできませんが、日本財団は臨機応変に、そして柔軟に対応し、子どもたちが安心して通うことができるよう第三の居場所を運営していきます。

日本財団 飯澤幸世

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。