ゲームでつながった、8,000人の想いと子どもたちの笑顔。「子ども第三の居場所」にジャングルジムを

長崎県大村市にある「子ども第三の居場所」の大村拠点。放課後の子ども預かり事業を行っている同拠点では、小学校が終わる午後3時頃になると児童が集まり、その日の宿題を終え一目散に園庭に向けて走り出します。
拠点のいつもの光景──。そして今、走り出す子どもたちの視線の先にあるのは赤と青のカラフルなジャングルジム。実はこのジャングルジムには、多くの人々の想いが込められています。
2020年春の緊急事態宣言下、LINE株式会社のゲーム事業部では「ゲームで笑顔を届けたい」という社員の想いから「Make Positiveプロジェクト」を開始。プロジェクトの一環として、ゲーム内で使用する有料アイテムの売上の一部を寄付することを決めます。
この考えに賛同した多くのユーザーがアバターを購入。その数は8,000人以上にものぼります。そして、LINE ゲーム事業部は日本財団を通じて、「子ども第三の居場所」大村拠点にジャングルジムとログテーブルを贈りました。

「コロナ禍で、公園に遊びにいけない子どもたちもいました。せめて拠点では思う存分遊ばせてあげたい。そんな中で、ジャングルジムやログテーブルが子どもたちに笑顔になるきっかけをくれたんです」(「子ども第三の居場所」大村拠点 マネージャー西川一平さん)
困難な状況にある子どもたちを支援する「子ども第三の居場所」。大村拠点のマネージャー西川一平さんから、「ありがとう」のメッセージが届きました。
地域の子どもの成長を見守り続けて70年
「子ども第三の居場所」大村拠点を運営する社会福祉法人 大村子供の家は、戦後間もないころから約70年にわたり地域の子どもの成長を見守ってきました。
児童養護施設、小規模保育園、認定子ども園、児童家庭支援センターなど、地域の子どもを支えるさまざまな活動をする中で、2018年10月に新たに放課後の子どもの居場所づくりとして「子ども第三の居場所」を開始します。

施設には1人から2人ですべての児童を指導しているケースもある一方で、「第三の居場所」大村拠点のスタッフは総勢8名。現在22名の子どもを受け入れています。そのため、手厚く子どもたちを保育することができているそうです。

「最近うれしい出来事がありました。なかなかじっとしていられない児童がいて、ずっとマンツーマンで指導をしてきたんですね。
友だちとケンカしてしまうことも多かったから、そういうときは『ヒーローはね、相手を傷つけたらいけないんだよ』なんて話して。本当にたくさん会話をして、向き合いました。
すると先日学校から、拠点に行くようになって変わった、すごく落ち着いてきた、と言われたんです。こうして児童が徐々に成長していくのを実感できるとうれしいですね」(西川さん)
コロナ禍、ゲームの力で子どもに笑顔を届けたい
2020年春。日本全国で新型コロナウイルスの感染が拡大します。学校からも不要不急の外出は控えるように通達が出て、親は感染への懸念から公園での遊びなどをなるべく控えるように。大村の子どもたちも外で自由に遊ぶことができなくなっていきました。
それと同時期、LINE株式会社のゲーム事業部では有志のメンバーがオンラインで集まり議論が交わされていました。議題は「コロナ禍の中で自分たちにできることは何か」。

多くの人が外出をできずにストレスを抱えているけれど、ゲームは家に居ながら楽しい時間を過ごしてもらうことができる。今ならばゲームで社会に貢献することができるかもしれない。
そう考えたLINEのゲーム事業部は「Make Positiveプロジェクト」を開始。自分たちに何ができるのかを話し合いました。とにかく今できることをなるべく早く実現させよう。そして、検討から約1カ月というスピードで、プロジェクトは実施されます。

「ゲームの力で少しでもポジティブになってもらいたい。笑顔を届けたい。そんな想いで、『ポジティブタイム』という無料でゲームをできる期間を設けたり、オンライン会議用の壁紙を配布したり、さまざまなプロジェクトを実施しました。
その中の1つが今回の寄付プロジェクトです。『LINE POP2』というパズルゲームと、『LINE プレイ』というアバターでユーザー同士がコミュニュケーションを楽しむゲームがあります。そのゲーム内で、寄付につながる専用の有料アイテムを用意しました。アイテム購入の売上の一部を日本財団に寄付するという試みです。
いつもの遊びの延長線上でコロナ禍で困っている人に寄付ができる。私たちの想いに共感いただいた8,000人ものユーザーが寄付用アイテムを購入してくださいました」(LINE ゲーム事業本部 パブリッシングゲーム事業部 事業部長 大久保希美さん)

8,000人の想いが込められた寄付金。LINEと日本財団は話し合いの末に、「第三の居場所」大村拠点への寄付を決めます。
「今回の寄付を通じて『子ども第三の居場所』のことを知り、強く共感しました。
LINEのゲーム事業部としては、ゲームに限らず『遊び』を通じて人生を豊かにしたいという考えがあります。そのため寄付をするにあたっても、『遊び』で子どもに笑顔を届けたいという想いから、遊具が良いのではという結論に至りました。
今後これらの遊具体験を通したリアルの日々の生活の充実が、将来的にSNSやオンラインゲーム、インターネットを楽しくかしこく使ってもらえることにつながることを願っています」(大久保さん)
子どもの笑い声が地域を明るくする
「子ども第三の居場所」大村拠点には、「子ども第三の居場所」の施設としては珍しい広い園庭があります。イースト広場というフリースペースでは、子どもたちが穴を掘ったり、秘密基地をつくったり工夫しながら遊んでいます。
しかし当時、大村拠点には遊具と呼ぶようなものはありませんでした。
どんな遊具が良いか。できれば副次的な効果があるものを、ということで体を動かすだけでなく体幹も鍛えられるジャングルジム。そして、広いグラウンドのどこかに休憩やコミュニケーションできる場所を、ということでログテーブルを寄贈することになりました。

「子どもたちの反応は思った以上でした。今ではジャングルジムは取り合いになるほどの人気です。ジャングルジムの上で、子どもたちがいろんな遊びをしているのですが、みんながそこに集まることで、そこまで仲良くなかったグループ同士が遊ぶようになりました。新しい輪ができたように感じます。
ログテーブルでは、日々子どもたちの遊びの作戦会議が行われています。あとは2つのテーブルをくっつけてベッドにしたり。みんな工夫して遊んでいますよ。ログテーブルはスタッフと子どもの話し合いの場にもなっていますね」(西川さん)
今、日本は新型コロナウイルスの第3波の最中。まだ自粛や行動制限により暗いムードが世の中には流れています。そんなときだからこそ、子どもたちの笑い声が必要だと、西川さんは語ります。

「コロナ禍で、大人だけでなく子どもたちもまた、我慢をしなければならないことが続いていました。ジャングルジムやログテーブルは子どもたちが再び外で遊ぶきっかけをつくってくれたんです。
世の中はこんな状況ですが、子どもたちはむしろそんな状況さえ楽しめる力を持っています。子どもたちが元気よく、はつらつと遊ぶ姿を見ると、僕も元気を分けてもらえるんですよね。だから、拠点で子どもたちが楽しく遊んでいる声が地域に響けば、地域全体が明るくなるんじゃないかなと思うんです」(西川さん)
写真:仲地俊裕
寄付団体
LINE株式会社 ゲーム事業部
「LINE GAME」は、LINEのコーポレートミッションである「CLOSING THE DISTANCE」に基づき、ゲームに関わる人と人、情報・コンテンツ、サービスなどを最適な距離で繋げることで、ユーザー同士のコミュニケーション活性化を図っている。日本国内のみならず、アジア主要4カ国(日本、台湾、タイ、インドネシア)を中心に、各国に合わせてローカライズされたゲームのグローバル展開も行っており、「LINE GAME」の全世界累計ダウンロード数は全世界8.8億ダウンロードを突破している。

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。