子ども達の世界を広げたい。町に根ざした体験機会を創出する「すまいるタイム」。

子ども第三の居場所では、子ども達の学習支援や生活支援をする他にも、各拠点ごとに調理活動やレジャー体験など、子ども達の経験の幅を広げるプログラム「すまいるタイム」を実施しています。今回ご紹介するのは、年間36回以上に及ぶ様々なプログラムを実施する北海道・東神楽中央拠点。東神楽中央拠点マネージャーの小林孝之さんにお話をお伺いしました。
人口増加を続ける東神楽町
東神楽町は、北海道で2番目に人口が多い旭川市に隣接した人口約1万人ほどの町です。
町として特徴的なのは、2015年まで40年に渡り、緩やかに人口が増え続けていること。また、年少人口率が高く「北の子ども王国・東神楽」と呼ばれるほど、子育て支援や教育の充実に力を入れています。

町の人口密集地帯は、役場がある「中央市街地地区」と旭川市に隣接する「ひじり野地区」の大きく二つに分かれます。子ども第三の居場所は、それぞれのエリアに一つずつあり、今回ご紹介する東神楽中央拠点は、中央市街地にあります。
東神楽中央拠点は、2019年6月開所。現在は8名の子どもが利用しています。

15時過ぎ、学校終わりの子ども達が拠点に帰ってきます。宿題やおやつ、清掃を終えたら、おまちかねの「すまいるタイム」です。
「すまいるタイム」は、スポーツ活動、創作活動、調理活動、行事活動など、少人数の良さを生かした体験活動プログラムのこと。子ども達の興味・関心に合わせて、様々な遊ぶや学びの機会をつくっています。
粉から麺を作る調理活動
例えば、調理活動。毎週土曜日はお弁当DAYのため、そこに合わせて月数回、拠点で食事を作ります。メニューは、パスタ・パン・カレー・うどん・お好み焼きなど子ども達の人気メニューです。驚きなのは、パスタやうどんの麺は粉から作っていること。
「パスタやそばなどの麺は粉から作ります。餃子作りをした時は、皮から作りました。材料の買い出しから子ども達とするのですが、最初の頃、『うどんを作ろう』と言いながらスーパーで麺を買わないので、『麺買ってないよ?』と疑問を持つ子もいましたね。でも、何度も繰り返すうちに、粉から作るものだと定着してきました」

創作活動では、アイロンビーズやテーブル作り、食品サンプルなどを作ってきました。

小林:創作活動は、月ごとにテーマを決めて取り組みます。拠点で使うテーブルを作った時は、子ども達にインパクトドライバーの使い方を教えて、ネジを打ち込んでもらったり、塗装を任せたりしました。初めのうちは、工具を使うことを怖がっている子もいましたが、回数を重ねるうちにコツを掴んで楽しんでいましたね。
東神楽の文化や風土を生かした体験活動
また力を入れて取り組んでいるのが、東神楽町ならではのプログラムです。その一つが、和太鼓。東神楽町には「義経桜太鼓」として親しまれている太鼓があり、町を上げて盛り上げています。
小林:役場に勤めている方が、町民サークル「義経桜太鼓保存会」に所属していたことがきっかけで、子ども達にも体験機会をつくることができました。地域の公民館に集まり、まずはサークルの方に演奏のお手本を見せてもらい、その後、太鼓の叩き方やコツを教えていただきました。町の盆踊り大会で演奏する曲も教えてもらったので、夏の本番が楽しみです。
子ども達はみんな初めての太鼓体験。迫力に驚いていたそうですが、叩いた時の振動を楽しんだり、上達する喜びを感じていたそうです。

他にも、冬の時期には「ワカサギ釣り」に出かけるなど、北海道らしい気候ならではの遊びも取り入れています。
小林:こちらも役場の方からお誘いを受けたのがきっかけです。朝8時くらいに拠点を出発し、10時くらい湖に到着。お昼過ぎまで、ワカサギ釣りをしました。釣れたワカサギを、その場で天ぷらにしてお昼ご飯にしました。私達スタッフも初体験で、釣れたら大喜び。大人も一緒に楽しみましたね。

小林さんは、「乗馬や川下りなど東神楽町や北海道らしいプログラムを増やしていきたい」と語ります。
最後に、豊富な体験機会を提供する理由をお伺いしました。
小林:拠点に通う子ども達は、自信がない子が多いんですよね。だから様々な体験を通して、「やればできる」と自信をつけてもらいたいし、その自信が日々の過ごし方にも良い影響を与えると嬉しいです。
このようなプログラムのねらいを持ちながらも、「何より僕が料理や創作活動が好きなんです」と話す小林さん。「やってみたいな」、「面白いな」と思う物を見つけたら、自分でもできるか作り方を調べて、チャレンジしてみる。子ども達に伝えるためプログラムにする。そうした小林さんの姿勢を日々子ども達に見せることも、子ども達に挑戦することや創作の喜びを伝えていることでしょう。
日本財団としても、子ども第三の居場所では各拠点の独自の取り組みを応援していきます。
取材:北川由依

日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。