ワールド・オーシャン・サミット2023

於: リスボン

お集りの皆さん。

私は、あらゆる生命の誕生を支えてきた海洋のことを「母なる海」と呼んでいます。「母なる海」は地球のあらゆる生命を産み、育て、生活することを可能にしてきた場所であります。勿論我々人類も海に生かされている存在であり、皆さんご承知の通りSGDs14で言及されている通り「健全海洋は人類の生存と地球上の生命にとって不可欠である」ことを再認識しなければなりません。

しかしながら、我々はどれほどの速さで「母なる海」に負荷をかけてきたかについて十分理解していません。海が誕生して約44億年といわれる長い歴史があります。それに対し、人類は近代化し始めてたった100年という極めて短い期間で「母なる海」を蝕んできたのです。海洋汚染、乱獲、秩序のない開発によりもはや完全な回復は不可能といえる状態になっています。今の状態が継続されれば、いずれ人類生存の危機にさらされるのではないでしょうか。会場のみなさん、今こそ世界の人々にこの危機的状況を知らせ、対策を立てる必要があります。「母なる海」は静かな悲鳴を上げているのです。

日本財団はこうした海洋の危機に対処すべく、長年にわたり海の専門家を育成してきました。これまで育成された150ヶ国から1600名を超えるフェローは多種多様な海の分野に跨る世界的なネットワークを構築し、一丸となって海洋の危機に立ち向かっています。会場の皆さん、世界には200近い国がありますが、海は1つです。今こそ、我々は、政治や思想、宗教、人種、国境の垣根を越えて団結し協力する必要があります。なぜなら、人類共有の財産であり、人類生存に不可欠な「母なる海」を健全な状態で未来に引継いでいく重大な責任が我々にはあるのですから。ありがとうございました。