第2回バングラデシュハンセン病全国会議
シェイク・ハシナ・首相、ザヒード・マレク・保健大臣岩間公典・駐バングラデシュ日本国大使、お集りの皆さま。第2回バングラデシュハンセン病全国会議開催の為に多大なご尽力を頂いたことに心より感謝申し上げます。
「2030年までにハンセン病をゼロにする」。これは、4年前に開催した第一回全国会議の際に、ハシナ首相が掲げて下さった目標です。私自身これまで120ヶ国を超える国を訪問し、国家元首に対してハンセン病制圧活動への協力を呼び掛けて参りました。しかし、一国の指導者がハンセン病に関してこのような明確なゴールを示した例は他にはありません。ハシナ首相の勇断は、バングラデッシュで今も社会からの不当なスティグマや差別に苦しむハンセン病患者・回復者・その家族らに大きな勇気と希望を与えました。現在、バングラデシュでは保健省と回復者組織であるALOやボグラ連合が協力をして、ハンセン病ゼロという野心的目標に向かって努力されていることを嬉しく思います。
こうしたハシナ首相主導によるバングラデシュのハンセン病ゼロに向けた取組みは、多くのハンセン病蔓延国の指導者に対しても、大きな刺激を与えています。例えば、来年、世界で2番目に新規患者数が多く、唯一公衆衛生上の問題としてのハンセン病制圧を達成していないブラジルにおいて、ルラ大統領臨席のもと全国会議が開催されることになりました。また、アフリカにおけるハンセン病蔓延国の一つであるエチオピアにおいても、2024年中に同様の全国会議を行うことが計画されています。ご参加の皆さん、これら一連の動きは皆さんの活動が影響を与えたものであります。私はハンセン病制圧大使として、バングラデッシュの取組みに敬意を表すると同時に、この経験を積極的に他国と共有していきたいと考えております。
一方で、新型コロナウイルスの影響で、ハンセン病対策が多くの国で残念ながら停滞してしまったこともまた事実であります。その結果、統計上は新規患者が減少したように見えますが、実際は診断や治療が受けられない、或いは障害のケアを十分に行うことが出来ない患者が多数おります。加えて、今やハンセン病は完治する病気となりましたが、完治してなお患者、回復者、その家族は偏見と差別に苦しんでおります。社会、友人、そして家族からも差別され、捨てられる病気は数多の病気の中でハンセン病しかありません。こうした差別を経験した患者、回復者、その家族は世界で数千万人に上るとも言われ、大規模な人権問題の1つといえるのです。この人権問題としてのハンセン病を解決するべく、私自身2000年初頭から当時の国連人権委員会に働きかけ、2010年には国連総会でハンセン病患者、回復者とその家族に対する差別撤廃決議と「原則とガイドライン」が192ヶ国全会一致で可決されました。しかしながら、ハンセン病にまつわる差別の問題は、社会に深く静かに沈殿して、未だにこの深刻な問題は世界の人々に知られず、理解されていないのが現実です。
こうした状況に鑑み、本日の会議が、2030年までにハンセン病をゼロにするという目標について、関係者一同があらためて確認するとともに、その実現に向けて具体的な方策を話し合う機会になればと期待しております。私自身も、WHOハンセン病制圧大使として、バングラデッシュにおけるハンセン病ゼロとう目標の実現のために、努力を惜しまず積極的に活動して参ります。お集りの皆さん、ハンセン病のない世界は見果てぬ夢ではありません。私は85歳の若者ですから、共に不可能を可能にして参りましょう。ありがとうございました。