WHO定例記者会見(ハンセン病ゼロに向けて)

於: ジュネーブ

テドロス・事務局長、ご紹介感謝致します。

御高承の通り、ハンセン病は神罰や呪いなどではなく、今や薬を服用することで完治する病気であります。一方で、ともすると多くの国ではハンセン病は過去の病気であると認識されているかもしれませんが、世界中に隠れた患者が依然として沢山いる現在進行形の病気であります。そして、ハンセン病患者、回復者、その家族への差別は旧約聖書の時代から現在に至るまで苛烈を極めている人権問題でもあります。私は、過去50年間120ヶ国以上の現場を訪問して、社会のみならず家族からも捨てられ、絶望と孤独の渦中にいる数えきれない人々と出会いました。私はこのような痛みや苦しみを無くすため、人生を賭してハンセン病をゼロにするための闘いを続けていますが、残念ながらまだ道半ばであります。

では、ハンセン病ゼロに向けて我々が出来ることは何でしょうか。それは積極的な早期発見・早期治療であります。ハンセン病の特徴は、罹患しても痛みや熱などの目立った症状もなく、またハンセン病に対する根強い差別によりなかなか病院へ行かず、病気が進行してしまうと障害が発現してしまうことであります。つまり、ハンセン病の制圧には、早期発見・早期治療は不可欠であるのみならず、そのためには、病院で患者が診察に来るのを待つのではなく、戸別訪問など我々が積極的に隠れた患者を探しに行かなければなりません。薬は世界中で無料で配布されており、コロナも落ち着いてきた今こそ、積極的な早期発見・早期治療を今一度強化しハンセン病をゼロにする好機であると私は確信しています。皆さん、「ハンセン病ゼロ」は見果てぬ夢ではありません。共に不可能を可能にするために、関係各位の皆さんの引続きのご協力を何卒お願い申し上げます。