ワールドオーシャンサミット2025開催「ひとつしかない海」に向けた、世界の協調と行動
2025年3月12日・13日の2日間、東京都内にて「第12回ワールド・オーシャン・サミット」が開催されました。エコノミスト・インパクト主催の本サミットは、日本財団を公式ホスト(共催)として迎え、世界各国の政策決定者、専門家、企業、国際機関、市民団体が参加しました。今回は、日本で初の開催となり、海洋汚染や気候変動、生物多様性の損失といった地球規模の課題に対し、「協調」を中心テーマに、多角的な議論が行われました。
海洋汚染ゼロに向けた国際協力の必要性
サミットでは、日本財団とエコノミスト・インパクトによる共同イニシアチブ「Back to Blue」によるセッションが行われました。廃水や化学物質、プラスチックによる海洋汚染の実態とその克服に向けた包括的な取り組みが紹介され、国際機関との連携、データの統合、科学に基づく政策形成の重要性が確認されました。また、企業や金融機関に対しては、海洋汚染対策がリスク管理であると同時に新たな投資機会であるとの認識が示され、実行可能な経済的戦略の構築が呼びかけられました。
日本からのメッセージと各界の発信
開会にあたり、日本財団会長の笹川陽平氏は、次のように述べました。
「世界に180以上の国がある一方、海は1つしかありません。各国による自国の利益を追求した行動をすべて吸収してその影響を被るのは、他でもない“私たちの海”です」
内閣総理大臣の石破茂首相は、海洋国家としての日本の責任と行動の必要性に言及し、「我が国は島国から海洋大国というものを目指してまいりたいと思っております。海の安全であり、そして平和であり、そして資源の利用であり、そういうことに向けて、我が国はもっと責任を果たしてまいりたいと思っております。」と語りました。
また、海洋政策担当の坂井大臣からは、日本政府による379項目にわたる総合海洋政策の推進状況が紹介され、科学的データに基づく政策立案の必要性と、海洋状況把握(MDA)などの取り組みが説明されました。

廃水問題・酸性化・生物多様性など複合的課題にも議論
サミットでは、「Back to Blue」主導による下水・廃水汚染の経済的影響に関する調査結果が発表されました。具体的には、下水管理の不備によりインドでは年間20億ドル規模の漁業損失が生じているとの報告がありました。また、国際機関の代表者からは、海洋酸性化がもたらす生態系と人間社会への影響に関する最新の知見が共有されました。
これらの課題に対し、科学、政策、金融、地域社会が連携し、統合的に解決策を構築していく必要があることが改めて確認されました。
小島嶼国(SIDS)と民間支援のあり方
サミット内で実施された小島嶼国に関するセッションでは、気候変動や海面上昇に脆弱なこれらの国々が、革新的な研究や環境保護をリードしている現状が紹介されました。フィランソロピーを含む国際的な支援においては、対象国の自立とレジリエンス強化を尊重し、地域間の知識共有や人材育成への投資が重要であるとの指摘がなされました。
今後に向けた展望
笹川会長は閉会に際し、「東京で始まった議論が、アワー・オーシャン会議の釜山、そして6月に開催される国連海洋会議・ニースへとつながり、希望ある未来を導くことを願います」と語りました。ワールド・オーシャン・サミットは、政策提言や知見の共有にとどまらず、実行を伴う国際連携の場としての新たな一歩を示しました。今後も日本財団は、国際社会と連携しながら、持続可能な海洋環境の実現に向けた取り組みを続けてまいります。
開催日時 | 2025年3月12-13日 |
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開催場所 | ANAインターコンチネンタルホテル |
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日本財団 海洋事業部
- 担当:本多
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